ミドリムシの有用性に注目が集まり、1660年代から研究が進められてもうすぐ60年。
2005年、東京大学がミドリムシの大量培養に成功してから10年以上が経過しました。
その過程の中で、「ミドリムシの吸収率がすごい!」ということでミドリムシは再び話題を集めています。
93.1%!と確かに、ミドリムシの吸収率は驚異的です。
実はこれ、ミドリムシに細胞壁がないことが理由なのです。
ただ正直なところ、「細胞壁、なんだっけ?」とよく知らない方が多いことと思います。
そこで今回は、ミドリムシの吸収率93.1%な理由、「細胞壁」をテーマにお話を進めていきましょう。
細胞壁とは
「細胞壁」という単語を聞き、「どこかで聞いたことがあるな?」という方も多いと思います。
当然です。なぜなら細胞壁というのは、中学校や高校の理科の授業中に登場するものだからです。
そんな細胞壁ですが、植物の細胞の一つひとつを包み込むようにして存在する「壁」のことです。
主な仕事としては、外部刺激から細胞を保護することと細胞自体の形状を維持することが挙げられます。
「細胞」とついているためか、よく勘違いされるのはすべての動植物内に細胞壁が存在しているということです。
実はこれ、間違いです。細胞壁は、あくまで植物内の細胞にしか存在していません。
当然、私たち霊長類を含め鳥類や魚類、爬虫類などには細胞壁はないのです。
上述した通り、細胞壁は細胞を包み込み、支えるようにして存在しています。
理科の実験中、顕微鏡で細胞壁を観察された方は実際にどのような形をしているかご存知のことと思います。
一見すると単純構造である細胞壁ですが、1660年代〜2017年、現在に至るまで未だ解明されていない謎の多い壁なのです。
一般的に細胞というのは、ある程度自由な形を取ることができます。
だからこそ一つひとつが絡みつき成長し、私たち人間のように大きな生命体を形作ることができるのです。
しかし、よく考えると人間以上に大きな植物も数多く存在しています。
細胞の成長を阻害しかねない細胞壁があるにもかかわらず、どうして植物たちがこれほどまで成長できているかが大きな謎なのです。
吸収率93.1は驚異的!
細胞壁の役割、そしてその謎についてはご理解いただけたことでしょう。
理科の授業で聞いていたからと、すべてが解明されていなかったというのには驚きと興味が湧いてきます。
では、今回のテーマでもある、「ミドリムシに細胞壁はあるのか?」。
ミドリムシは、動物と植物、両方の機能を持つ世界でも珍しい生き物の1つです。
葉緑体を持つことで知られ、光合成による酸素の生成能力と豊富な栄養素にNASA(アメリカ航空宇宙局)も注目するほどです。
結論から申し上げると、ミドリムシには細胞壁はありません。
これは、ミドリムシが動物であり植物であるという特殊な生物であることが原因として考えられています。
また、この細胞壁がないからこそミドリムシの吸収率は93.1%と驚異的なのです。
一般的に、植物の吸収率は40%前後。
正直なところ、白菜やほうれん草、小松菜などの野菜(植物)の吸収率はそれほど高くはありません。
正しく調理し、よく咬んで飲み込んだとしても吸収率は40%ほどです。
これは、植物内の細胞壁が原因として挙げられます。
細胞壁というのは、細胞を保護する壁です。
細胞内の栄養素を吸収するためには、この細胞壁をどうにか取り除く必要があります。
人間には細胞壁を取り除く酵素がない!
細胞壁を取り除くためは、「セルラーぜ」と呼ばれる成分が必要です。
しかしこの成分、私たち人間は保持していません。
物理的に細胞壁を壊さない限り、栄養素を吸収できないのです。
その点、ミドリムシは植物でありながら細胞壁がありません。
ミドリムシの栄養素は全59種類、吸収率93.1%ということもありそれらを効率的に摂取することが可能です。
吸収率を高めるには?
ミドリムシに細胞壁がないということには驚いていただけたでしょう。
しかし、日々の生活をミドリムシだけに頼る訳にはいきません。
現時点で、ミドリムシはあくまで補助食品、サプリメントなどでしか販売されていないのです。
どうすれば吸収率を高められるのか?
重要なのは、いかに細胞壁を破壊するかというところにあります。
方法としては、以下が考えられるでしょう。
・ジュース状になるまですりつぶす
・細胞壁が壊れるまで加熱する
おすすめの調理は油を使用して加熱するというものです。
加熱することで細胞壁が壊れるのはもちろん、油にはビタミン類の吸収を高める効果が期待できます。
また、きちんと咀嚼(そしゃく)するというのも重要です。
小学校の授業で、「1口30回噛む」と習った方も多いでしょう。
ジュース状になるまですりつぶすことで、吸収率が高まるためと言えます。
まとめ
今回は、「細胞壁」をテーマに、ミドリムシの吸収率についてまとめました。
細胞壁がないからこそ、ミドリムシの吸収率が93.1%と驚異的なのも納得いただけたことでしょう。
しかし、ミドリムシはあくまで補助食品の1つでしかありません。
大切なのは日々の食事、その栄養補助としてミドリムシの活用をおすすめします。